基調講演+パネルディスカッション・講演録

資本コスト経営による
企業価値向上

ROIC経営の実践と投資家との対話

セミナー・レポート | 2019.2

このレポートは2019年2月20日開催のセミナーの抜粋です。

このレポートはセミナーの抜粋です。セミナー開催時のプログラムはこちら


日経バリューサーチは、「資本コスト経営による企業価値向上~ROIC経営の実践と投資家との対話~」セミナーを2019年2月20日(水)に東京で開催。約300名の経営層、IR・経営企画部門の方に参加頂きました。

通称「伊藤レポート」に参画された一橋大学大学院 野間幹晴氏から資本コストと企業価値の関係についてご講演頂頂きました。

パネルディスカッションでは
・安藤 聡氏(オムロン 取締役)
・斉藤 伸太郎氏(ナブテスコ コーポレート・コミュニケーション部 広報・CSR担当参事)
・山口 善三氏(ピジョン 経営企画本部 コーポレートコミュニケーション室 チーフマネージャー)
・前田 勇気氏(日本たばこ産業 執行役員 企画担当)
に登壇頂き「投資家との対話と資本コスト経営」についてお話頂きました。

基調講演

最適資本構成とCCC改善

野間 幹晴 氏
一橋大学 大学院経営管理研究科 教授

なぜいま資本コスト経営に注目が集まるのか?

資本コスト経営とは投資家の期待する最低限の収益率を超える経営をいう。株主資本コストを上回るリターン(株高+配当)を生むか、もしくは加重平均資本コスト(WACC)を超える投下資本利益率(ROIC)を目指す経営だ。

米国企業は赤字でもないのに事業撤退を決めるときがある。赤字・黒字という損益計算書(PL)型の視点ではなく、資本コストを下回るとの判断からだ。旧松下電器産業の中村邦夫社長が「在庫は罪庫」と評したが、資本コスト経営ではバランスシートを強く意識する必要がある。

2014年夏の「伊藤レポート」、同年に算出の始まったJPX日経インデックス400(JPX日経400)、(政府が成長戦略に盛り込んだ)「コーポレートガバナンス・コード」などにより、企業の自己資本利益率(ROE)に対する意識が大きく変わり、実際日本企業のROEは純利益率が牽引する形で2ポイント程度改善した。

ROE経営に影響を与えた伊藤レポートだが、個別各社における資本コストについてまでは議論を控えてきた。今後はギアを変えて資本コストをも意識した経営を考えるステージに入ったといえる。

CGが示すリスクテイクの必要性

2018年に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」は企業にリスクを取った積極的な投資を促し、資本コストを的確に把握したうえでその基本指針を示す、ことなどを示した。ここから浮かび上がる日本企業の課題は総資産に占める現預金の増加や持ち合い株の存在だ。

資本コストは現預金にもかかってくる。では、株主還元をして減らせばよいのか。過去の調査では米国企業の7割が無配で、現在もアマゾン・ドット・コムやグーグルなどの有力企業は配当を実施していない。米国では、投資に回して将来の成長で株主還元する経営が多い。キャッシュフローの変化でリスク投資にどれだけ積極的かを世界で比べると、日本は最下位の部類に入る。ガバナンス・コードはその消極さを指摘し、企業価値を生む源泉たるリスク投資を促しているといえる。

ROICの役割

事業ごとにレバレッジや財務状況が異なる中で、現実に資本コスト経営に落とし込むにはROICの活用が有効だ。そして、ROEとROICをつなぐのが資本構成とキャッシュだ。最適資本構成、つまり...

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