第四次産業革命の進展とイノベーション経営の重要性
現在、経済産業省ではスタートアップ企業の支援と、大企業のオープンイノベーションの促進に力を入れています。
今、ビジネスモデルは大変革機を迎えています。ネット検索で台頭した米グーグルは最近、情報通信技術を活用したスマートシティーに着目。都市内のすべてのデータを自社で把握し、住民向けに高付加価値サービスを展開する狙いです。
新興勢力が急成長している東南アジアでは、シンガポールのグラブのように自身がスタートアップ支援の核となっている例もあります。日本より1周も2周も先を進むユニコーン企業が、社会全体の変革を促していると言えます。
ビジネスを取り巻く環境が大きく変わる中、政策当局としてオープンイノベーションの促進を後押しするのが我々の仕事です。大企業のスタートアップへの投資促進では、両社の協業を促す税制優遇を来年度、導入します。規制が緩い海外で新たなビジネスがどんどん進むなか、国内でも規制緩和のツールも用意します。企業には、日本経済を成長させていくための次の新たなビジネスの芽をぜひ探して頂きたいです。
イノベーション概論(イントロダクション)
企業が生き残るためにはイノベーションを生み出すことが必要です。イノベーションの根本原理は何でしょうか。経済学者のシュンペーターは、既存の「知」同士の新たな組み合わせがイノベーションの根本と語っています。ただ、人間の認知には限界があります。イノベーションに悩んでいる日本の大手や中堅企業は何十年も同じ業界にいて、目の前にある知と知の組み合わせをやり尽くしているのが現実です。
自分たちの業界から、なるべく遠くにある知を幅広く探索し、自分が持つ知と新たに組み合わせることが何より重要となります。私はこれを「知の探索」と呼んでいます。例えばトヨタの生産方式は、自動車業界と全く関係のない米国のスーパーマーケットからヒントを得ました。探索と深化をバランス良くできる企業や経営者、組織がイノベーションを起こせる確率が高い。これは世界の経営学のコンセンサスになっています。
ところが企業は目の前にあるものを深掘りする「知の深化」ばかりに傾きやすい。遠くを幅広く見る探索には時間も金も人手もかかります。しかも知と知の組み合わせは失敗も多いため、どうしても深化の方にばかり行きやすくなります。だから中長期的なイノベーションが枯渇してしまうのです。
日本企業で知の探索が起きづらいもうひとつの理由として・・・