日米欧で経営者などの役員報酬を決める算定基準に、株主の経済的利益を示す株主総利回り(TSR)を活用する動きが広がっている。稼いだ資金でどう企業価値を高めることができたかを経営者の「通信簿」にしているためだ。日本でも2019年3月期以降、有価証券報告書で開示が義務付けられた。
TSRとはトータル・シェアホルダー・リターンの頭文字をつなげたもの。株式投資によって得られた収益(配当とキャピタルゲイン)を投資額(株価)で割った比率だ。企業の業績だけではなく、株価を含めた経営の成果として、取締役の報酬額を決める際の重要な指標として使われている。日本でも金融庁がまとめた企業の情報開示に関する内閣府令で、2019年3月期以降の有価証券報告書に直近5年分を開示している。
商船三井は2022年3月期から取締役の株式報酬の指標にTSRを採用した。株式報酬の30%を東証株価指数や競合他社と比較したTSR成長率をもとに支給額を決める仕組みだ。株主価値の向上のインセンティブを目的にしている。
粉飾決算事件を経たオリンパスは、2019年に「物言う株主」から社外取締役を招き、ガバナンス(企業統治)の抜本改革を進めてきた。執行役に株主価値を追求する意思決定を促すために、TSRを役員報酬の算定式に組み込んだ。株主と経営陣の双方の観点から、長期の業績と報酬を連動させる狙いだ。
武田薬品工業はクリストフ・ウェバー社長ら取締役の業績連動報酬の体系を見直した。TSRがプラスで、しかも米ファイザーなど世界の製薬大手16社と比べて高かった場合に報酬を加算する仕組みだ。
ただ、欧米はさらに日本の先を行く。2019年5月20日付の日本経済新聞によると、英国では法律で取締役の個別報酬を開示、過去10年間の最高経営責任者(CEO)の報酬額とTSRの推移を対比させ、企業価値と報酬の変動を投資家が確認しやすくしている。米国ではCEO、最高財務責任者(CFO)などの過去3年間の報酬の一覧表などを開示している。また、短期的にTSRを上昇させるには株主還元が有効で、研究開発などの長期的な経営施策より、短期的な株価上昇への施策に経営資源が偏るリスクも指摘されている。
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また、企業価値向上を目指す企業の皆様が、分析に活用する資本コストやROICなどの様々な指標をシミュレーション・試算できる「Excelアドイン」テンプレート集もご用意しています。分析のための財務情報もExcelファイルに一括出力することも可能です。
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・企業比較 - 時系列資本コスト分析テンプレート
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