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東証再編から考える、企業価値向上のアイデア

ビジネスリサーチコラム | 2022.4

初出: 2022.3、 改訂: 2022.4

2022年4月4日に、東京証券取引所が新市場区分に移行しました。
多くのビジネスパーソンにとっても、東証再編にまつわる一連の取組みは、上場意義や企業価値を見つめ直す契機になったのではないでしょうか?

実務の現場では、新市場区分移行後にも、新上場基準の維持や改訂コーポレートガバナンス・コードに盛り込まれた気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく気候リスクの開示や、人権尊重を求める各種規定などへの対応が続きます。

本コラムでは、東証再編の狙いを改めて確認した上で、再編を企業価値向上の好機として捉え、実務の現場で何ができるのかを考えてみたいと思います。

東証再編に続くもの

東証再編は、日本経済全体の発展を目指す一大プロジェクトです。

2018年12月に東京証券取引所が公表した「市場構造の在り方等に係る意見募集」を紐解くと、東京証券取引所は「日本経済全体の発展に寄与する資本市場の持続的な発展を実現するために、上場会社が企業価値の維持向上をより積極的に取り組む動機付けや国内外の多様な投資家からより高い支持を得られる仕掛けが必要である」と考えていたことがわかります。*1

東証再編は、上場会社が企業価値の維持向上に取り組みやすく、投資家にとってはより投資しやすい市場環境が整い始めたサインと受け取ることができます。

*1 株式会社東京証券取引所「市場構造の在り方等の検討に係る意見募集(論点ペーパー)」(PDF) 2018/12/21

上場するメリット

東京証券取引所は、「上場とは企業が発行する株式を証券取引所で売買できるように、証券取引所が資格を与えること」と定義しています。上場によって、企業は円滑な資金調達が可能になるほか、社会的信用や知名度の向上といったメリットがあると言われています。その一方で、上場を維持するためのコストの増加や社会的責任の増大といった新たな負担も生じることとなります。

上場メリットを活かすために必要なこと

「企業価値を維持向上させ、資金調達を円滑に行う」というのは、企業成長にとって不可欠なサイクルです。

新成長領域における研究開発の強化、工場や生産設備の増強、海外進出など、事業を進めるためには資金が必要となります。中でも、リスクはあるが高成長が見込まれるビジネスチャンスを実現するためのリソースを調達する時には、「円滑な資金調達」「社会的信用」「知名度の向上」という上場のメリットを実感することができるのではないでしょうか?

事業を成長させるためには、資金以外にヒトやモノ、情報などのリソースが必要になります。資金調達以外の場面でも、「社会的信用」「知名度」は企業により多くのチャンスをもたらすと考えられます。

企業が自社の成長ストーリーを投資家に訴求する時には、「企業価値が維持向上されてきた」というトラックレコードも重要だと考えられます。企業価値について真剣に向き合っている姿勢が感じられるかという点は、投資家が企業の成長ストーリーの実現可能性を判断する重要な材料になるとみています。

新市場区分のコンセプト

今回の東証再編では、上場企業の特性(上場会社の成長段階、投資家の層)に応じて、3つの市場区分が設けられました。

「プライム市場」の上場企業は高い時価総額・流動性、高いガバナンスを備え、投資家との建設的な対話を中心に捉えて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットすることが求められます。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく気候リスクの開示や、独立社外取締役の員数などがコーポレートガバナンス・コードの原則に盛り込まれ、それらにも対応しなければなりません。「スタンダード市場」の企業についても、基本的なガバナンス水準を備えることと企業価値の向上が求められます。また、高い成長性を期待される「グロース市場」の企業おいても事業計画及びその進捗の適時・適切な開示を行うことが必要となります。*2

*2 株式会社東京証券取引所「新市場区分の概要等について」(PDF) 2018/2/21

資本市場の活性化を意識した新上場基準

市場区分の変更に伴い、各市場のコンセプトに合わせた新上場基準が設定されました。

上場企業は、従来の上場基準においても形式基準と実質基準の2つの観点で上場企業にふさわしい挙動が求められてきました。形式基準とは、株主数や利益の額など、既定の数値基準を指します。実質基準は、企業の継続性や収益性、企業経営の健全性、コーポレートガバナンスや内部管理体制、適切な企業開示など、数値で判定できない内容の基準を示したものです。

新上場基準では、形式基準に実際に市場で取引されている株式をもとに算出される流通株式時価総額といった株式の流動性に関する項目が加えられたほか、実質基準についても気候変動リスクや人材の多様性など新しい潮流への対応を促す項目が並んでいます。

実務の現場でも、新上場基準対応を通じて、持続的な企業価値向上のための施策の必要性を感じる機会が増えているのではないでしょうか。

企業価値向上策は
ファクトベースでコツコツと

企業価値向上のための施策は、資本市場の目線で自社をポジショニングし、自分たちが伝えたい自社のイメージと資本市場の評価との乖離を埋めていく作業が中心になると想定されます。様々な施策を実効性のあるものにしていくためには、ファクトベースでの定点観測と情報収集が役立つと考えられます。

チェック1
理論株価を定期的に算出し、「株価の乖離」の原因を探る

株価向上策を練る時にまずお勧めしたいのが、自社の株価水準の確認です。株価が割高なのか、割安なのかを判断するには、複数の指標を用いて多面的な分析を行うことが有効だと考えられます。

DCF法でのバリュエーションを3ステップで出力する/マルチプル法で利用する指標を出力するDCF法でのバリュエーションを3ステップで出力する/マルチプル法で利用する指標を出力する

日経バリューサーチでは、業界平均のマルチプルやDCFなどの企業価値算出を行う機能を搭載しています。ツールを用いることで、煩雑な計算やデータ管理を素早く正確に行うことができます。

チェック2
類似企業の経営計画・事業計画を比較し、自社のポジショニングを把握する

中期経営計画や事業計画の比較は、自社のポジショニングに役立ちます。事業面では、同業他社と比較することが多いと思いますが、株価向上策の観点では、時価総額が近い企業や株主構成、会社のイメージが似ている企業など、事業内容以外の観点で比較を行うことで新たな気づきが得られる場合もあります。

事業課題・シナリオで企業を抽出する事業課題・シナリオで企業を抽出する

日経バリューサーチでは、様々な切り口で比較対象企業を抽出することができます。中期経営計画などの開示資料を効率的に収集することもでき、作業の効率化にも役立ちます。

チェック3
TCFD対応や統合報告書の好事例の情報収集体制を構築する

投資家との対話においては、非財務情報が重要となります。「プライム市場」の企業においては、TCFDの提言に基づく気候リスクの開示などが求められますが、この点に関しては、まだデファクトスタンダードが固まっていない分野となります。

テーマごとに資料を自動で収集「コレクション機能」/先行している企業のIR資料をチェックテーマごとに資料を自動で収集「コレクション機能」/先行している企業のIR資料をチェック

先行している企業の好事例を参考にしながら、IR資料に何を盛り込み、どのように自社の価値を伝えていくかを検討する取り組みも有効だと考えられます。

チェック4
投資家や資本市場の動向を定点観測する

近年、日本の資本市場はグローバル化が進んでいます。

投資家もグローバルに投資をしている場合も多く、各国の経済情勢や金融政策などが投資家の投資行動に与える影響は少なくありません。

株価の推移を相対的に把握する/市況や金利、経済統計を効率よく確認する株価の推移を相対的に把握する/市況や金利、経済統計を効率よく確認する

日経バリューサーチでは、株価とインデックスの推移を相対化する機能を搭載しています。経済統計サマリを利用すると、市況や金利、各種経済統計を効率よく確認できます。

マクロの視点で世界経済や資本市場の動向を定点観測していくことで、自社の事業や株価水準と関連性が高い外部要因を特定することができると考えられます。

チェック5
自社の魅力を紹介する資料を作る

自社の魅力を社内外へ向けて発信する作業も重要です。

株価水準や事業計画に関する調査や分析、投資家との対話について検討した内容を存分に活かし、自社の強味を資本市場に発信していきましょう。

日経バリューサーチは、初めて資料を作成する方から資料作成のプロの方まで、伝えたいことが伝わる資料作りのための素材をご提供しています。

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継続は力なり

企業価値向上の施策の成果が感じられるまでには、時間を要す場合も多いと考えられます。持続的な企業価値向上のためには、ファクトベースの定点観測や情報収集を継続できる持久力の高い組織作りも重要な要素であると考えています。

日経バリューサーチでは、カスタマーサクセスチームがユーザーの皆様の情報活用をサポートします。

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