競合調査にかかる時間が体感で10分の1に
「共想共創カンパニー」の実現に注力できている
2003年のキヤノンマーケティングジャパングループ参画以来、システムインテグレーション(SI)、いわゆる受諾開発の案件を中心に規模を拡大してきたキヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)。
現在は、2025年に向けてありたい姿や事業モデルを描いた長期ビジョン「VISION2025」の実現に向け、「サービス提供モデル」「システムインテグレーションモデル」「ビジネス共想モデル」の3つの事業を推進しています。
日経バリューサーチ導入の目的
- 自社サービスの独自性を確立するため、競合および市場調査の品質とスピードを向上したい
- 新規事業開発における社内プロセスの策定・改善を行いたい
導入の効果
- 競合および市場調査に要する時間が約10分の1に短縮
- 本ツール活用により、調査結果の品質が均一化、調査における抜け漏れがなくなる
- 主体的に市場や競合の情報をキャッチアップする習慣の定着
今回、日経バリューサーチを導入したキヤノンITSのサービスインキュベーションセンター(以下、S-INC)は、3事業のうち「サービス提供モデル」を担うべく2022年1月に始動した部署。
従来の「お客様ごとの要望に応えてシステムを作る」仕事から一歩踏み込み、「業界やお客様に共通した課題を解決するサービス提供モデルのビジネスを新たに創る」ことがミッションで、同社にとってはまったく新しい挑戦といえる領域です。
「ゼロからイチ」を模索するS-INCでは、自社の独自性を確立するため、競合調査の品質とスピードの向上に日経バリューサーチを役立てているとのことです。
1. 日経バリューサーチ導入の背景
競合調査・市場調査のタイムロス解消が課題
他の事業部へも展開できる、アカウントの拡張性が導入の決め手に
藤原 氏:S-INCの取り組む施策は、「新規サービス事業化」「事業化プロセスの整備」「全社啓蒙活動」の3つです。立ち上げにあたり、社内の各部門、および他業界から新規ビジネス開発の経験がある多様な人材を集めてスタートしました。
サービス提供モデルの主体は各事業部であり、彼らが発想したアイデアを具体化するための検討に伴走して、新規サービスを事業化するのがS-INCのメインの役割です。
といっても、まったく新しい取り組みなだけに、伴走プロセスの定義や具体的な進め方も手探りの状況です。このあたりを進めながら整備していくことも重要な任務です。
さらに、既存のSIビジネスとは大きく性質が異なる新規サービス創出について、ワークショップやセミナーを通じて社員へ啓蒙を図っています。
我々が新規事業を考える場合、まったく競合の存在しないブルーオーシャンに飛び込むことは多くなく、これまで培ってきた重要な資産であるスキルセットや経験、ノウハウを軸に事業検討するため、競合調査と市場調査が欠かせません。この調査の品質とスピードがその後の業務で提供できる価値に大きく関わってくることから、少しでも向上させたいと思っていました。
高橋 氏:これまで、競合調査や市場調査には、その段階で欲しい情報に応じて、さまざまな手段を講じていました。
デスクトップリサーチ(あるテーマについてインターネットを使い情報を集めること)をする、専門の調査会社に依頼する、市場調査レポートを購入する、ユーザーヒアリングをするといった手段です。
中でも、必要に応じてレポートを購入しつつ、S-INCの人員を投入してデスクトップリサーチをする方法がメインでした。
しかし、S-INCですべての調査業務を担うには限界がありますし、そもそもデスクトップリサーチでは作業者の力量によって成果物の品質が大きく左右されます。本題である新規事業アイデアの検討、さらには開発プロセスに行き着くまでの調査業務には、労力と品質に大きな課題感を持っていました。
山尾 氏:前職でもリサーチ業務は多く経験していたため、情報の真偽の見極めや精査といったところには比較的自信がありました。ただ、どうしても時間がかかるのがネックで…。
新規事業開発というスピードが求められる部署ですし、効率化は必須だと感じていました。
高橋 氏:このようなS-INCでの情報精査の課題を感じながら、社内プロセスの策定・改善の一環として支援ツールの整備を進める中、展示会で解決できそうなツールを見つけたんです。
そこで、稟議を上げるために類似製品も調べていたところ、マーケティング会社出身のメンバーから日経バリューサーチを推薦され、トライアルを経て導入が決まりました。
調査活動を効率化していくためには、S-INCだけが調査するのではなく、支援先の事業部門の担当者にも情報収集してもらわなくてはなりません。実は、当社はSIとしてお客様のニーズに応えるビジネスモデルを長く展開してきたため、主体的に市場や競合の情報をキャッチアップする習慣が根付いていませんでした。
新規事業を生み出すには、こうした企業風土の改善も必要です。その点でも日経バリューサーチが、多くの人が情報にふれられるツールであったことは魅力でしたね。
2. 活用方法とメリット
競合調査においてリアルタイムな情報をキャッチアップ
情報の信頼性の高さから、精査にかかる時間が劇的に短縮
山尾 氏:日経バリューサーチの導入効果は、2023年8月にプレスリリースした教育関連案件の初期リサーチの際から感じました。
中学校・高校向けに自社サービスを開発するのは当社としても初めてだったため、これまでなら競合他社はどこか、学校教育のトレンドは何かといった初期情報を調べるのにかなりの時間がかかったはずなんです。
しかし、競合比較レポート機能を使ったことで、業界分類や注目企業から簡単に競合比較レポートが出力できてとても重宝しました。
競合比較レポートのほか、コレクション機能も初期調査には有用ですね。
プリセットされた注目テーマや、案件に合うようカスタマイズしたテーマから、関連記事や企業・統計・業界の情報、キーワードをまとめて自動的に引っ張ってきてくれるので、競合他社の取り組みがリアルタイムにキャッチアップできて、ありがたかったです。
体感として、未知の業界を調べる時間がだいたい10分の1くらいには短縮されたのではないでしょうか。
藤原 氏:従来のデスクトップリサーチと違って、信頼性の高い情報を網羅的に取得できるのも大きなメリットです。
山尾 氏:そうですね。これまでは、出てきた情報の裏付けをとるのに苦労していました。その点、日経バリューサーチに出てきた情報なら、出どころが確かなので安心です。
高橋 氏:以前、ある新規事業開発の専門家の方が「新しいアイデアを生み出すためには、ビジネスのヒントになる素材を普段からいかに増やしておけるかがカギである」と仰っていました。コレクション機能と、毎日メールが飛んでくる仕組みがまさにそれだと思っています。
新規事業に関するコレクションを作成することで、業界を超えたさまざまな企業の取り組みや事業拡大のための考え方を知り、自分の中に素材が増えていくのを感じました。
藤原 氏:伴走する事業部門にアカウントを展開したことで、それぞれが外部の情報に積極的にふれ、視野を広げている様子を垣間見るようになりました。
冒頭でお話しした企業風土の面にも良い変化が起き、主体的に市場や競合の情報をキャッチアップしているのを実感しています。
3. 今後の展開
現場ならではの意見を伝え、
日経バリューサーチとも「共想共創」を実現したい
高橋 氏:日経バリューサーチを活用して情報収集をする事業部門の担当者を増やすために、社内ポータルに日経バリューサーチの紹介記事を出したり、ガイドラインを作って配布したりしました。その結果、思いがけないことに営業部門や経営企画部門に所属する社員から、営業活動や企業探索などに使用したいという声がけがあったんです。日経バリューサーチはアカウント共有が容易ですので、彼らも気軽にトライアルしてみて、そのまま継続利用することになりました。
私たちのメインミッションではありませんが、役立つツールが社内で活用されるのはうれしいことです。
山尾 氏:関連する記事に登場する有識者の方にコンタクトをとって、出てきたアイデアの市場価値を計るのにも活用できそうですよね。ユーザー会のようなイベントで、記事制作に携わった日経の記者の方に直接お話を聞けるような機会があったらうれしいです。
藤原 氏:業界動向の把握も大事なので、ぜひ、業界レポートの更新頻度を上げていただけるとうれしいですね。セミナーなどの勉強会も開いていただいているので、現場ならではの忌憚ない意見を伝えながら、日経さんと当社と、お互いに成長していけたらと思います。
高橋 氏:「VISION2025」で掲げた共想共創カンパニーの理念は、協力会社さんとの関係でも同様です。藤原さんの言うとおり、日経バリューサーチのサービス改善に私たちも積極的に貢献しながら、ビジネスを共創していく関係でありたいです。